おせちメーカーとして約半世紀の歴史を刻む、恵那銀の森。
創業者・渡邉大作の夢「森と共生したい」という強い想いから
ゴルフ場跡地を買い取り、この跡地を森に還す森づくり事業を
2020年にスタートさせました。
このブログでは、この事業を担う、私たち「3代目森の番人」2名の
夢と希望、ワクワクだけでなく、苦悩もお伝えできたらと思います。
さて今回は、おせちの新工場建設時に伐られてしまった木について
の続報を伝えさせてください。
※前回の記事は「チェンソーアーティスト・太田和徳さんとの
初コラボ!」https://ginnomori.info/blog/archives/1098
今回は、初代森の番人とのお仕事を通じて感じたオドロキ&
ほっこりをリポートさせていただきたいと思います。
いろいろな方に引き取っていただき、森のいのちの有効活用が
進んだわけですが、まだまだ木材は残っていました。しかし、
確実に劣化は進んでいます。これをどうするか、初代森の番人
夫妻に相談したところ…。
「まだ利用する人もいるかもしれんから、とりあえず
動かそうか。今からやろう」。
ん?動かすっていっても…。直径40cm×2m、ほかにも直径60cmもの
材がゴロゴロあるのです。ちなみにこれ、1本が100kg以上のもの。
男手ふたりでは到底扱えないほどの重さなのです。
うろたえ過ぎな私を尻目に、初代は手早く準備を始めました。
用意したのは…
・トビ(金具の先がトビのくちばしのようにとがった専門道具)
・旧ゴルフ場で活躍していた、オンボロ軽トラ(失礼ながら…)
・古~い滑車
・長さ2m×厚み2cmほどの板2枚
・トラロープ1本(工事現場に良くある、アレです)
これっぽっちの道具で、巨大丸太を運ぼうというのです。
ところが、そこはさすが初代。トビを丸太に突き刺すと難なく
動かし、たったひとり手作業で、軽トラに立てかけた板の
ところまで引いていきます。
板の下まで持ってきたら、ここからはトラロープ&滑車の出番。
軽トラに固定した滑車に通したトラロープを丸太に引っ掛け、
初代の奥様が引っ張ります。
滑車があることで、本来は”不安定な足場で木材を持ち上げる”
という作業を、”安定した足場でロープを下に引っ張る”という
軽作業に変換するというわけです!昔ながらの知恵ですね。
ただ、滑車&トラロープだけでは丸太を持ち上げられません。
ここからは3人の共同作業。トラロープを引きつつ男手ふたりが
丸太を転がして、軽トラに積み込みます。無事に積み込めたら、
材が落ちないよう固定して移動&木材を降ろし、また積んで…
の繰り返し。
2日目午後からは私の都合がつかず参加できなかったのです
が、3日目に見たらスッカラカン。ご夫妻はほぼ人力での移動を
あっさり完了してしまわれました…。
感心したのは、初代のトビの使い方。こじって木材を浮かし、
木材の方向を自在に変え、丸太の山が崩れないように絶妙な
コントロールをしていきます。木を伐って市場に運ぶ「山師」
ならではの超スキル!そのたくましすぎな背中を、たっぷりと
拝見いたしました。
今も恵那の山中に暮らし、田畑を耕作し、森で木を伐る初代。
決して高い技術を誇ることはありません。丸太を運びつつ
ふと山を見ながら、ぼそりとひと言…。
「自然の美しさに叶うものは、何もない」。
人生の長い時間をかけて自然と向き合い、想い、愛してきた初代が
発する言葉。オドロキと心地よい疲労に包まれたカラダに、
豊かな感情がじんと響きます。
私が3代目として勤務を始めて、まだ2年目。初代との仕事時間は、
まだ数回。これから冬に向けて、ともに働き、技術を学び、自然に
掛ける想いを存分に受け継ぎたい。それを森づくりに活かすのが、
「森の番人」のミッションなのだと、改めて実感できたのでした。
恵那銀の森は、人と森が共生できる社会を目指し、人と森をつなぐ
場所づくりのひとつとして、閉鎖されたゴルフ場を人が集える場所に
していく「森づくり事業」を進めています。 いつの日が子どもの笑顔が
あふれ、人々が森の癒しを感じてもらえる森ができる日まで。
私たちの取り組みは続いていきます。
http://ginnomori.info/shisetsu/ginnomori_vision.htm