おせちメーカーとして約半世紀の歴史を刻む、恵那銀の森。
創業者・渡邉大作の夢「森と共生したい」という強い想いから
ゴルフ場跡地を買い取り、この跡地を森に還す森づくり事業を
2020年にスタートさせました。
このブログでは、この事業を担う、私たち「3代目森の番人」2名の
夢と希望、ワクワクだけでなく、苦悩やつぶやきもお伝えしたいと思います。
今回は、森づくり事業とおせちのかかわりをご紹介させてください。
「ヒバを採ってきてほしい」。紅葉がピークを少し過ぎたころ、本社のおせち
事業部から依頼が舞い込みました。上の写真のなかで、池に映り込む背の高い
常緑樹が、ヒバ。この葉をアワビなどの下に敷くことで、食材に殺菌効果を
もたらしつつ、清々しいお正月を演出するのです。
すっくと立つヒバの姿は、丸っこい樹形になるコナラなどとはまた違う、
凛とした美しさがあります。この枝葉を少しだけおすそわけしてもらい、
おせちの重箱に加えるのです。
ところで、「ヒバ」というのは俗称で、正式な名前は「サワラ」(椹)です。
木曽地方では、おひつの材料として活用されてきた、ニッポンを感じさせる
樹木の一種。ヒノキ科ということもあって、全体の印象はヒノキそっくり!
サワラの葉っぱを裏返してよーく見ると、ヒノキとは異なる白い模様が
あります。この斑点を4つセットで無理やりつなぎ、アルファベットの
「X」や「H」に例えることも多いのだとか。
こちらはヒノキの葉っぱの裏側。先ほどと同様、アルファベットに例えると
「Y」の字がずらっと並んでいます。ある意味で壮観ですね!これに加えて、
葉先がとがらないので、サワラと見分けがつくのです。
さて、本題の採集に戻りましょう。手順としては、
①幹から枝を切り
②剪定ばさみで少し短くして
③コンテナに入れる
という流れ。とても簡単そうに見えますが、樹高が高いサワラから枝を
採るときには、脚立が必要になることもしばしば。また、自然のものだけに
クモの巣などが付着しているケースもあります。おせち工場でしっかり洗浄
するとわかっていても、異物混入にならないよう、チェックが必要です。
作業中、ふと見るとハラビロカマキリの卵がくっついていました!彼らは
比較的高いところに産卵するカマキリの一種なので、サワラは魅力的な存在
なのでしょう。この枝はサワラの枝にそっと差して、戻しておきました。
おせちの彩りに活用できるだけでなく、意外なくらい小さな生き物との
かかわりも持つサワラ。ゴルフ場跡地にある樹木の一つひとつが、森のいち
キャラクターとしてどんな働きをしているか、もっと理解を深める必要が
ありそうです。私たちがきめ細やかな知識を得ることができれば、きっと
地元の生態系と共生する、サスティナブルな森ができるはずです。
未来の森を担うかもしれない、一本の木が教えてくれたこと。
この大切なメッセージをしっかりと胸に刻みつつ、
私たちは今日も森づくりに励みます。
恵那銀の森は、人と森が共生できる社会を目指し、人と森をつなぐ
場所づくりのひとつとして、閉鎖されたゴルフ場を人が集える場所に
していく「森づくり事業」を進めています。 いつの日が子どもの笑顔が
あふれ、人々が森の癒しを感じてもらえる森ができる日まで。
私たちの取り組みは続いていきます。
http://ginnomori.info/shisetsu/ginnomori_vision.htm