おせちメーカーとして約半世紀の歴史を刻む、恵那銀の森。創業者・
渡邉大作の夢「森と共生したい」という強い想いからゴルフ場跡地を買い
取り、この跡地を森に還す森づくり事業を2020年にスタートさせました。
このブログでは、この事業を担う、私たち「3代目森の番人」2名の夢と希望、
ワクワクだけでなく、苦悩やつぶやきもお伝えしたいと思います。
今回は、園内の店と森とのかかわりについて、お伝えしたいと思います。
恵那銀の森の園内にたたずむ創作和食の店・五節會(ごせちえ)をご存じでしょう
か。少し難しく聞こえる店名のテーマは、年5回の神様との会食=「節会」(正月、
桃の節句、端午の節句、七夕、菊の節句)。日本独自のこの文化を発信・継承する
ための、とても大切な拠点です。ただ、ごせちえは和食店ゆえに、私たち「森」とは
接点がありそう、でもあまりない…という関係でした。
転機が訪れたのは、年末の豊年祭。「門松づくり体験」のためにウメを剪定した
ときのことです。大量の剪定枝を廃棄するには、惜しい。そう思ったときにふと
思い出したのが、ごせちえでした。枝を浸けている水が凍りつく厳冬期だから、
花が咲くかはわからないけど、料理のあしらいに使ってもらえるのでは…。
思いつきから引き渡した数日後、スタッフから「見に来て」と連絡が入りました。
店内に入ると、ヒイラギの鮮烈な赤が美しい、ダイナミックな生け花が目に入り
ました。そのバックを彩るのは、ウメ!ひと目見て、あの剪定枝だとすぐに気づき
ました。活けたのは、この店を取り仕切る板長。聞いてみると、「閃いたから、
活けた」とボソリ。凄腕の料理人でありながら、持ち込まれた枝を無駄にせず、
「ヒラメキ」で活ける。その粋な心遣いがうれしく、思わず満面の笑顔になって
しまいました。
カウンター厨房の奥、研ぎ澄まされた和包丁のすぐ脇にも、ウメの枝が。こちらは
あえて暖房の効いた店内に置いておき、開花させるのが狙いだとか。咲いた花は
料理のあしらいとして活用しているそう。なお、窓の外にもウメが見えるのが、
わかりますか?これはあえて野外に活けつつ、店内からつぼみが見えるよう、
板長が計らってくださっているとのことでした。
徐々に開花することで人々に春を伝える、ウメ。そのままでも十分に美しいウメは、
人の“息遣い”がプラスされることで、輝きを何倍にも増しているように見えました。
息遣いのカタチは、陶器や床の間、料理といった形あるものから、板長の心意気の
ような目に見えないものまで、さまざま。これをコトバで表現するなら、「豊か」や
「Rich」というワードを当てはめるのでしょう。
私たちの森づくりも、ただ樹を植えるのではなく、ただ人を動員するわけでもなく、豊か
でありたい。一見すると曖昧な「豊かさ」、これを人にしか醸すことのできない原動力と
してさまざまな活動につなげられれば――。ごせちえの板長が分けてくださった、素朴
だけど優しい想いを胸に、私たちは豊かな森を目指したいと、想いを一新したのでした。
恵那銀の森は、人と森が共生できる社会を目指し、人と森をつなぐ場所づくりの
ひとつとして、閉鎖されたゴルフ場を人が集える場所にしていく「森づくり事業」
を進めています。 いつの日が子どもの笑顔があふれ、人々が森の癒しを感じて
もらえる森ができる日まで。私たちの取り組みは続いていきます。
http://ginnomori.info/shisetsu/ginnomori_vision.htm