おせちメーカーとして約半世紀の歴史を刻む、恵那銀の森。創業者・
渡邉大作の夢「森と共生したい」という強い想いからゴルフ場跡地を買い
取り、この跡地を森に還す森づくり事業を2020年にスタートさせました。
このブログでは、この事業を担う、私たち「3代目森の番人」2名の夢と
希望、ワクワクだけでなく、苦悩やつぶやきもお伝えしたいと思います。
今回は、初代森の番人とともに行なった、枯れマツ伐採のお話をさせて
ください。
「あのクロマツ、そろそろ危ないぞ」。11月某日、ゴルフ場の管理作業に
いそしむ初代森の番人から、こんなご指摘をいただきました。ゴルフ場跡地
から道をまたいですぐのところに、クロマツが一本だけ立っています。
その木が、すっかり枯れてしまっていたのでした。
まっすぐな木がごく普通の山林に生えていたのなら、技術的にさほど難しい
ものではありません。しかし、現場は電柱あり+生活道路あり、さらに枯れ
マツという悪条件。倒す方向を間違えれば電線が切れますし、放置すれば
突然倒れ、通行中の人やクルマにぶつかるかもしれません。また、芯だけが
残った枯れマツは、腐りの進行具合もまちまち。倒れる際に回転するなど、
大きな危険を伴います。
こうした難しい現場仕事の第一歩は、道路の封鎖手続き。隣接する別荘地の
生活道路でもあるため、管理者を紹介いただき、日時を調整しました。時間は、
午前10時からの2時間。朝夕の通勤と、午後の買い物時間を避ける設定です。
封鎖のお知らせ看板を準備して、さらに伐採後の掃除段取りを考えて下草を
刈りながら、当日を迎えました。
当日、朝9時。初代森の番人夫妻とともに、準備を始めました。初代番人は
脚立に登り、伐採するマツにワイヤーを掛けました。道路をまたいだゴルフ場の
切り株に固定して、専門の道具「チルホール」で引っ張るためです。ただ切る
だけでは、どちらに倒れるか読めません。こうして確実に、伐倒方向(切り倒す
方向)を定めます。
朝10時、定刻通りに伐採が始まりました。初代番人がチルホールから伸びる
ワイヤーをピンと張り、私と初代夫人は、通行者がいないかどうか、確認に
走ります。やがて威勢の良いチェンソーのエンジン音を数分にわたり響かせ、
チルホールでさらに枯れマツを引っ張る初代番人。そして、「行くぞ~!」。
バリッ、メリッ…
メリメリメリ…
ドスーン!!!!(地響き)
まだ伐採に慣れない私は、どきどきしながら倒れたクロマツのもとへ。
見てみると、かなり腐りが進行しており、材のほとんどが変色していました。
「放っておけば、この冬には転がった(=勝手に倒れた)だろうねぇ」。
初代番人の言葉からは、ただただ安堵が感じられました。
緑豊かな景色が思い浮かぶ「森づくり」というコトバ。いっぽうでこの仕事は、
危険とつねに隣り合わせであり、キレイごとでは済まされない一面があります。
「アカマツは上から枯れて折れるけども、クロマツは根っこから倒れることが
多い」という初代の言葉に、経験の大切さを痛感したのでした。
今回切ったクロマツの樹齢は、およそ30年。もっと太い木の伐採でも引き
受けられるように。そしてその伐採技術を、豊かで喜ばれる森づくりに
活かせるように…。
枯れマツのいのちを無駄にしないため、今後ますます、精進を続けて
いきたいと思います。
恵那銀の森は、人と森が共生できる社会を目指し、人と森をつなぐ場所づくりの
ひとつとして、閉鎖されたゴルフ場を人が集える場所にしていく「森づくり事業」
を進めています。 いつの日が子どもの笑顔があふれ、人々が森の癒しを感じて
もらえる森ができる日まで。私たちの取り組みは続いていきます。
http://ginnomori.info/shisetsu/ginnomori_vision.htm